自分を絞り込まない、決めつけないほど人間は他者に対して寛容になり、親身になる。自分の中に弱さや卑しさや愚かさを認められる人間ほど、他者の弱さや卑しさや愚かさに対して寛容になれる。逆に、自分の中の弱さや卑しさや愚かさを認めない人間は、他者に対しても非寛容になります。目標を高く掲げて、自己陶治に励むこと自体は悪いことではありません。でも、その結果、自分ほど努力していない他人に対しては非寛容になり、意地悪くなるなら、そんな努力はしないほうがましだと僕は思います。
--内田樹「内田樹による内田樹」P44