長く教える仕事をしてきて経験的に言えるのは、人間の能力のひろびろとした発現を阻害している要因が2つあるということです。それは恐怖と自己評価の低さです。恐怖している人は防衛的になります。身体は硬直し、視野は狭くなり、感覚は鈍麻します。自己評価の低い人は何を求められても、「そんなことは私にはできるはずがない」と思い込む。自分の能力の限界を自分で低く設定してその中に居着いてしまう。
--内田樹「内田樹による内田樹」P57