降伏によって日本は、この条文(ポツダム宣言第八条)を呑んだわけであるが、それが意味するところは、敗戦の結果として日本は、基本的に、日清戦争以降に獲得した領土(主として、台湾、朝鮮半島、樺太、事実上の保護国である満州、ならびに日中戦争・太平洋戦争中に占領した領域)をすべて失うことになる、ということであった。もちろん、ここで微妙な問題となるのは、尖閣諸島もそのなかに含まれるところの沖縄ーー沖縄は日清戦争以前の「琉球処分」によって近代日本国家に編入されているーーのステイタスである。ここでは「吾等ノ決定スル諸小島」という表現に留意する必要がある。この「吾等」とは、連合国、すなわち米国・英国・中華民国・ソ連(のちに加わる)であり、この「吾等」が主要四島以外の日本の領土範囲を「決定」するという原則を、戦争の帰趨から日本は受け容れるほかなかったのである。
--白井聡「永続敗戦論 戦後日本の核心」P62