資本主義は、コストカットのために、労働生産性を上げようとする。労働生産性が上がれば、より少ない人数で今までと同じ量の生産物を作ることができる。その場合、経済規模が同じままなら、失業者が生まれてしまう。だが、資本主義のもとでは、失業者達は生活していくことができないし、失業率が高いことを、政治家たちは嫌う。そのため、雇用を守るために、絶えず、経済規模を拡張していくよう強い圧力がかかる。こうして、生産性を上げると、経済規模を拡大せざるを得なくなる。これが、「生産性の罠」である。
資本主義は「生産性の罠」から抜け出せず、経済成長を諦めることができない。そうすると、今度は、気候変動対策をしようにも、資源消費量が増大する「経済成長の罠」にはまってしまう。
だから、科学者たちも、資本主義の限界に気づき始めたのである。
--斎藤幸平「人新世の資本論」P70