家族での対話の基本と言うのは、「お腹減ってる? ご飯あるよ」とか、「お風呂入る? 沸いてるよ」とか、「眠い? お布団干しておいたよ」とか、そういう生理的な快の提供と不快の除去というところにあると思うんです。それがクリアーできたら、家庭としてはもう上等ですよ。それなしでは人間が生きてゆけない最低限の欲求があって、それを家族のメンバーが提供する。その対応関係がきちんとしていれば家族は基本的にはオッケーなんです。そういうことがきちんとできてから、もっと複雑な家庭関係に進めばいい。
--内田樹「14歳の子を持つ親たちへ」P60