1637年、日本では島原の乱が起こりました。徳川政権は一揆の手強さに戦慄を覚えます。キリスト教を信仰した人は、こんなに強くなれるのかと。そこで幕府は鎖国政策を一層強めると同時に、宗門改(しゅうもんあらため)という制度を設けました。いわば、日本版の異端審問制です。
全国の住民を檀家制度によって人(すなわち土地)に縛りつけ、毎年一回、彼らがキリシタンでないことを寺院に申告させました。そのかわり、檀家となった地域住民の冠婚葬祭はすべて寺院がやることになりました。つまり、寺院は信者を増やすための布教活動やらなくても、宗門改と冠婚葬祭をやっていればご飯が食べられるようになったのです。宗教の本質は布教にありますが、日本中の人間はすべてどこかの檀家になっていますから、布教をしたくてもできません。
宗門改により、日本の仏教は必然的に葬式仏教になっていきました。
--出口治明「全世界史(下)」P149