両国政府は千九百五年以前の歴史書等における記述を援用して自らの主張を根拠づけようとしており、古くは新羅や百済といった時代(六世紀)までもが言及されている。まさに「古反故への熱狂」そのものであるが、滑稽な事態であると言うほかない。なぜなら、近代主権国家の成立以前の世界において、国境線は現在よりもはるかに曖昧であり、人々の国家への帰属の意識、国民としての自覚も現代とは大きく異なるものであったからである。
--白井聡「永続敗戦論 戦後日本の核心P92