中国向けの輸出として1988年からナマコの採捕が始まったエクアドルでは、わずか3年でほとんどのナマコを獲り尽くしてしまった。それでも漁師たちは信じられないような高収入を生み出すナマコを諦めなかった。1000キロ以上離れたガラパゴス諸島まで繰り出した漁師は、原生林を切り開いてナマコを煮炊きするスペースを作り、どんどん一帯のナマコを密猟し続けたのだ。それが社会問題になると、規制緩和を求め、島の象徴であるダーウィン研究所を封鎖し、天然記念物であるゾウガメを殺戮すると恫喝した。エクアドルの騒動はナマコ戦争と呼ばれ、世界的なナマコ規制のきっかけになった。現在、日本のナマコもIUCN (国際自然保護連合)の絶滅危惧種に指定されている。
--鈴木智彦「サカナとヤクザ」P85