新たな潤沢さを求めて、現実に目を向けてみよう。すると気がつくはずだ。世の中は、経済成長のための「構造改革」が繰り返されることによって、むしろ、ますます経済格差、貧困や緊縮が溢れるようになっている、と。実際、世界で最も裕福な資本家26人は、貧困層38億人(世界人口の約半分)の総資産と同額の富を独占している。
これは偶然だろうか。いや、こう考えるべきではないか、資本主義こそが希少性を生み出すシステムだという風に。私たちは、普通、資本主義が豊かさや潤沢さをもたらしてくれると考えているが、本当は、逆なのではないか。
--斎藤幸平「人新世の資本論」P231