たとえば、人間は槍をライオンに向かって投げつけることができるけれども、ライオンはその槍がどこから来たのかさえ理解していない。私たちがなぜ魂を信じ、人間の優越性を当然視しているかについて、唯物論的に説明すると、そうなります。
ところが、21世紀半ばには、AIが私たちに向かって槍を投げつけるようになり、その槍がどこから来たのか、私たちはわからないという状況に陥るでしょう。
AIが私たちを出し抜き、優位に立つのです。人間があらゆる存在に対して優越しているという、多くの宗教が今まで主張してきた前提が融解してしまう。だからこそ、人間とは何か、という人間の固有性についての答えは、人間の優越性ではない、何か別のものに根ざしたものでなければなりません。
--ポール・メイソン「未来への大分岐」P304