物神崇拝的倒錯の極限において、人間は自分が身体をもっていることそれ自体を重荷に感じ、不快に感じ、それからの脱却を求めるようになる。自分の身体を二束三文で叩き売ってもいいような気分になる。そうなんです。そうでなければ、あれほど身体に悪いことにアディクトしたり、身体に穴を開けたり、墨を入れたり、バイクで信号無視したりしません。あれは身体が暴走しているのではなくて、脳が全能感に酔い痴れて暴走し、身体を奴隷のようにこき使っているのです。
--内田樹「若者よマルクスを読もうⅡ」P193