マルクスの用語として人口に膾炙するに至った「プロレタリア」というのは古代ローマにおいて「自分の子ども以外に資産を持たなかった最下層の民(Proles)」に由来する造語です。最下層の民でも「自分の子どもは持っていた」のです。ですから、「いまのような就労条件では、結婚もできないし、子どもを産み育てることもできない」と嘆いている日本の若い労働者たちは「プロレタリア」以下の、「完全に無資産的な存在」(それを指す用語さえまだ存在しない存在)だということになります。
--内田樹「若者よマルクスを読もうⅡ」P200