朝鮮戦争によって、アメリカはソ連、中国と対決姿勢を強めることになり、日本はアジア、太平洋地域における共産勢力との戦いの最前線に位置づけられた。民主化と非武装化の占領政策から一転して、日本は再軍備させられ、米軍に協力して「反共防波堤」の役割を担わされることになった。アメリカは反共主義者のA級戦犯を政界に復帰させ、傀儡にして日本を操ろうとした。また、反共政策への協力と引き換えに、東南アジアや韓国に対する日本の賠償責任はなし崩しになった。こうした事態を指して、「読売新聞」は「逆コース」と書いた。占領時代が終わっても、危機として占領政策の継続を望む者たちが政権中枢に居座る結果を招いた。かくて、日本はアメリカに国を売る者たちの居心地が最もいい国となったのだった。
--島田雅彦「人類最年長」P199