ポトラッチとは「明らかにやりすぎな交換」のこと。北アメリカ大陸における先住民族における特殊な文化儀礼をルーツとする。ある部族の酋長が、自分の権力を部族のメンバーに誇示するために、自分の持っている大事な宝物あげてしまったり、場合によっては祭りの場で自分の財産に火をつけて燃やしてしまったりする。(中略)ポトラッチとはつまり「贈与のボクシング(殴り合い)」だ。
しかし。一方ではこのポトラッチによって、権力者は自分の財産を定期的に手放すことになり、深刻な争いの火種となる「富の偏り」が防がれる。
「過剰」や「破壊」によって、富の再分配が行われ、誰かが一方的に勝ち続けるゲームになってしまうことが阻害される。ポトラッチは、不条理に見えて実は交換ゲームを潤滑にしていくための「必要な毒」なのであるよ。
--小倉ヒラク「発酵文化人類学」P184