いろいろ言いたいことはあっただろうけど、そういう時にかさにかかって子供に恥をかかせるようなことはしなかった。僕はそのときに家出に失敗したことからよりも、人生最初の「大勝負」に失敗したぼんくらな息子を両親が黙って受け入れてくれたことから、人生についてより多くを学んだように思います。
たとえ家族であっても、どれほど親しい間であっても、相手にどれほど非があっても、それでも「屈辱を与える」ことはしてはいけない。これは父母から学んだ最も大切な教訓だったと思います。
--内田樹「そのうちなんとかなるだろう」P41