フェニキア人はアルファベットを使ったことでも有名ですが、最古のアルファベットの誕生はBC 1800年代の原シナイ文字まで遡ります。当時、メソポタミアには楔形文字の文化があり、エジプトにはヒエログリフがありました。シナイ半島は、メソポタミアとエジプトの中間にあります。そこに住む人々は、メソポタミアとエジプトの両者と交易をしていましたから、いつも楔形文字とヒエログリフで苦労していました。そこで、もっと簡便な文字をと考えて編み出されたのがアルファベットでした。全言語を26文字で表すことのできるアルファベットという人類の偉大な発明は、メソポタミアとエジプトという二大文明がぶつかる辺境で生まれたのです。
--出口治明「全世界史(上)」P57