自由競争から生まれるのは、「生き方の違い」ではなく、「同じ生き方の格差の違い」だけである。格差だけがあって、価値観が同一の社会(例えば、全員が「金が欲しい」と思っていて、「金持ち」と「貧乏」の間に差別的な格差がある社会)は、生き方の多様性が確保されている社会ではない。それはおおもとの生き方は全員において均質化し、それぞれの量的格差だけが前景化する社会である。
--内田樹「子どもは判ってくれない」P240