1964年に木材の関税が撤廃されて外材がどんどん入ってくるようになり、日本の木材は売れなくなった。でも、それ以外は、日本の木材は国際価格の三倍で売れていたんです。吉野杉が一本300万円とか、そういう時代だった。その頃の記憶が、林業をやっている人たちの中にいまだに生きているんです。「また、ああいう時代が来ないかな」と思っているから、その人達は絶対に現在の林業を改革しようとしない。だから、70年代以降の日本の林業は駄目になってしまった。森林って息の長いものだから、本当は、将来を考えて、ちゃんと手入れしておかなければいけないのに放置したんです。状況で儲かってしまったから、その後怠けてしまった。
養老孟司「文系の壁」P101