啓蒙思想家と、それをさらに推し進めたマルクスのユダヤ人解放論のいずれもが「ユダヤ人(という被差別者)の解放」ではなく、むしろ「ユダヤ人(という悪夢)からの解放」という文型をもって語られたということである。 「迫害」とか「解放」といった語を、軽々に用いることを私たちは自制しなければならない。
--内田樹「私家版・ユダヤ文化論」P35