島田雅彦の新刊「悪貨」を読みました。
島田雅彦は、新刊が出たら無条件で買うことに決めている、マイ・フェイバリット作家です。
徒党を組まず、悪ぶらず、スマートに反抗の姿勢を取り続ける島田氏には、学生時代から常に憧れ、刺激を受けているのです。
さて、その「悪貨」ですが、これまでの作風とは多少異なり、犯罪小説の要素を取り入れ、ミステリー小説しか売れない今の状況に少し歩み寄った様に見えます。
おそらく、これこそが今回島田氏が、意図したことなのでしょう。普段島田作品を読まない読者にも手に取らせ、革命の芽を植え付ける(大袈裟ですが)。
物語の形を取って、しっかりと読者の意識にも変革をもたらす。 池澤夏樹や経済おやじになる前の村上龍など、ニューアカ華やかなりし頃に注目された作家には、そんな気概を持った作家が多いように思います。
最近人気のミステリー作家の作品は、確かに面白いのですが、なかなか私の意識に変革をもたらしてくれないのが、ちょっと慊いのです。 あっ、ちなみに「慊い(あきたりない)」は西村賢太の受け売りです。
「悪貨」の中から好きな一文を紹介します。
“あなたが子どもの頃、両親に深く愛されて育ったのなら、たとえ孤立無援になっても、耐えられるものです。(愛されていなかったら)人一倍頑張るでしょう。でも、脆い。”
元は古井由吉の言葉だそうです。
私もキ○タマを握りつぶされても痛くないほど可愛い息子がいますので、この言葉を肝に銘じておくことにします。
本日の耳汚し:Joy Denalane 「Born & Raised」