渚にて - On The Beach

体で感じること

小さなことから全体を理解していくためには、頭でばかり考えるよりも、体で感じることが大事だ。だから、頭脳ばかりを鍛えてきた高学歴の人は、体が動かずに現場仕事に苦労する場合が多い。現代の日本人にとっては、頭よりも体で感じる割合を増やしていくことが、修行に入る身としての第一歩と言えるかもしれない。
--渡邉格「菌の声を聴け」P156

型を破る

どんな小さなものでもいいから、型を破って「自分らしい表現」ができたとき、人は満足できる。自分らしい表現ができる人が増えれば、社会はもっと風通しが良くなって、さらに多様性が生まれていくだろう。そんな社会にはきっと、型を破るためのチャンスがごろごろ転がっているし、そもそも自分を型にはめようとする必要さえなくなっていくはずだ。
--渡邉格「菌の声を聴け」P145

動的思考

全体を理解するためには、わからないところを排除するよりも、一時保留しながら全体をあるがままに捉えて考えていったほうが、より正しい答えに近づくのではないだろうか。このような曖昧さが動的な思考につながり、どんな変化にも対応できるようになると実感している。

--渡邉格「菌の声を聴け」P85

人間性に重きをおいた生活

むしろ大事なのは、仕事以外の生活・人生があることを人々に伝えることです。雇用創出にこだわるのではなく、人間性に重きをおいた生活を作り出すことの方が重要です。その重要性を人々に伝え、納得してもらうことが、私たちの一番の課題です。

--ポール・メイソン「未来への大分岐」P277

知識の共有

知識は本来、一人ひとりで独占できるものではない。というのも、知識を発展させるためには、他人から学び、自らの知見を議論や批判を通じて、洗練させていかねばならないからです。知識には、他者との社会的協働という媒介が不可欠で、その意味で、最終的な知識は、誰かひとりに帰属させることはできません。今の社会では、特許などの制度によって、共有を妨げているわけですが。

--斎藤幸平「未来への大分岐」P248

倫理的かどうかを見分ける

少しのあいだ、自分自身であることは忘れ、自分を抽象化して、他人の視点から見てください。その選択に賛成できますか？他人の視点から考えて、賛成する理由を見つけられないなら、それは倫理的ではありません。これは倫理的かどうかを見分ける判定テストで、カントの普遍的な自律性をアップデートしたものです。

--マルクス・ガブリエル「未来への大分岐」P211

自分の頭を使って考える

こういう動き（アルゴリズムに服従して行動すること）に対する正しい抵抗の方法は、啓蒙主義を最大化することです。つまり、他者の指図や手引きに頼らず、自分の知性を使うということを徹底すべきなのです。

ところが、科学技術の進歩という神話が、自分の頭を使って考えるという能力を妨げています。人工物に文明のあり方をゆだねる文明、つまり哲学的・倫理学的な省察を隅に追いやる文明は、遅かれ早かれ精神無きサイバー独裁に乗っ取られてしまうでしょう。

--マルクス・ガブリエル「未来への大分岐」P205

「良心」はいかなる権力にも服従しない

「良心」はいかなる権力にも服従しない。

--島田雅彦「スノードロップ」P195 あとがき

悪政の正し方

人々は悪政を正すのに反乱や暴動を起こす必要はない。服従するのをやめるだけでいい。その瞬間から、自分の人生を始められる。無能な支配者に服従しても見返りは少なく、早晩、使い捨てられるのは明らかだ。

--島田雅彦「スノードロップ」P194 あとがき

従順さと我慢強さ

人々の従順さと我慢強さはいささかもその身を助けることにはならず、ただやかましく、図々しく、わがままな人間をのさばらせる結果を招きます。

--島田雅彦「スノードロップ」P178