閉鎖環境の中にいる生き物は、いずれ自分が排泄したアンモニアの毒にやられて死ぬことになっている。
--小田嶋隆「その「正義」があぶない」P57
高度に複雑かつ専門的になった科学によって引き起こされる「反知性主義」は、決して意図されたものではなく、内在的なものである。それだけに、ある意味で一層たちが悪い。その大きな流れに抗うには、新しい技術に振り回されすぎたり、情報検索に教えられすぎたり、目的にしばられすぎたりすることを意識的に回避しながら、自分の頭の中でしっかり考えるということを徹底していくしかない。
--仲野徹「日本の反知性主義」P281
一番大事なのは、知識を強化したり増やしたりすることじゃなくて、今の自分の頭の中で作動している推理とか、直観の仕組みそのものをそのつどの情報入力や環境の変化に対応して組み換えて、高度化できる可塑性だと思うんです。
--内田樹「日本の反知性主義」P225
親の欲望、親の抱えていた欠落感って、子どもにダイレクトに伝わりますね。不思議なもので、「親が持っているもの」はそれほど遺伝しないんだけども、「親が持ってなくて、欲しがっていたもの」って、子どもにそのまま遺伝する。
--内田樹「日本の反知性主義」P204
近代日本は、「天皇の使いよう」で樹立された国家だ。そして「天皇の使いよう」がまずくて迷走し、1945年の破局を迎えた国家だ。
--赤坂真理「日本の反知性主義」P139
ひとが「ふるえる」のは、自分が長い時間の流れの中において、「いるべきときに、いるべきところにいて、なすべきことをしている」という実感を得たときである。
--内田樹「日本の反知性主義」P35
何かを真に征服する唯一の方法とは、愛することなのだ。
--クリストファー・マクドゥーガル「BORN TO RUN 走るために生まれた」P176
おまえの心にはふたりの女神がいる。知恵の女神と富の女神だ。みんな、先に富を手に入れれば、知恵もついてくると考える。それで金儲けに血眼になる。しかし、それではあべこべだ。知恵の女神に心をささげ、愛し、気持ちを向ければ、富の女神が嫉妬して、お前を追いかけてくる。
--ジョー・ヴィヒル「BORN TO RUN 走るために生まれた」P134
人間の身体はリアルタイムで動いているのではない。ちょうどリールが釣り糸を巻き込むように、「未来」が「現在」を巻き取るような仕方で動くのである。私たちは、輪郭の鮮明な「未来像」をいわば「青写真」に見立てて、その下絵のとおりに時間をトレースしてゆく。だから、ネガティヴな未来像を繰り返し想像する習慣のある人間は、その想像の実現に向かってまっすぐ突き進んでゆくことになる。
--内田樹「街場の現代思想」P173
「自衛のために」という大義名分は「不戦条約」に対する一種の「リセットボタン」である。堂々たる宣言を掲げても、その一隅に小さな文字で「この宣言は次のような場合には破ってもよい」と書いてあると、私たちは「次のような場合」を必死になって探し始めるのである。人間というのはそういう度し難い生き物なのである。そのことを素直に認めよう。
--内田樹「街場の現代思想」P166