渚にて - On The Beach

脱・服従

反乱や暴動を起こす必要はない。服従するのをやめるだけでいい。その瞬間から、自分の人生を始められる。

--島田雅彦「パンとサーカス」P217

権力と真実

権力を持つから権力者なのではない。彼らが威張っていられるのは、人々が真実に目をつむり、自発的に服従するからだ。権力よりも強く、正しいものそれが真実。真実は誰も欺かず、支配しない。

--島田雅彦「パンとサーカス」P184

「言論の自由」とは

「言論の自由」と言うのは、「誰でも自分の思っていることを声高に主張する権利があり、そこには異論を遮ったり、恫喝によって黙らせたりすることも含まれる」という意味ではない(そう理解している人が大変多いが)。言論の自由とは、複数の理説が自由にゆきかう公共的な言論空間がいずれそれぞれの所論の理非について判定を下してくれるであろうという場の判定力に対する信認のことである。

--内田樹「呪いの時代」P271

 

「自分らしさイデオロギー」の弊害

弱く幼い人間が連帯の技術を知らぬままに、誰の支援もなしに、「自分らしさ」なんか追求していたら、社会的に下降する以外に道はありません。「自分らしさイデオロギー」は、確かに表層的にはきれいな言葉で飾られていますけれど、実践的には、アドバンテージのない環境で生まれた子どもたちから社会的上昇のチャンスを奪い、社会的下位に釘付けにするものです。

--内田樹「呪いの時代」P162

自分の欠点に対する寛容さ

自分の中に現に存在する卑猥さや臆病さや狭量を「こんなのは私ではない」と言って切り捨てたり、抑圧したりする人が、他者の卑猥さや臆病さや狭量に対して寛容でありうるはずがありません。自分の欠点に非寛容な人間が他者の欠点に寛容でありうるはずがありません。

--内田樹「呪いの時代」P137

母語と英語の二重言語状況

僕の同僚のアメリカ文学者が先日出張でフィリピンに行ったときに、フィリピンの大学人にそのことについて質問したそうです。母語と英語の二重言語状況というものをあなたはどう考えているのか、と。その人はこう答えたそうです。「英語で自分の意見が語れないのは不便(inconvenient)である。母語で自分の意見が語れないのは悲劇(tragic)である」

--内田樹「呪いの時代」P87

陰謀論の呪い

「悪いやつ」がどこかにいて、すべてをマニピュレイトしているというチープな物語を受け容れてしまうと、僕たちは「この世界を住み易くするために、ささやかだが具体的な努力をする」という意欲を致命的に殺がれてしまう。「努力しても報われない」と言う言葉をいったん口にすると、その言葉は自分自身に対する呪いとして活動し始める。

--内田樹「呪いの時代」P33

「力がある」ことを誇示したがるものは、ものを創らない

全能感を求める人はものを創ることを嫌います。創造すると、自分がどの程度の人間であるかがあからさまに暴露されてしまうからです。だから、全能感を優先的に求めるものは、自分に「力がある」ことを誇示したがるものは、何も「作品」を示さず、他人の創り出したものに無慈悲な批評を下してゆく生き方を選ぶようになります。自分の正味の実力に自信がない人間ほど攻撃的になり、その批評は残忍なものになるのはそのせいです。

--内田樹「呪いの時代」P19

体で感じること 3

体のつらさは、頭ではわからない。頭は現実よりも未来を見てしまう。頭で立てた予定を実行するのは体である。自分で体を動かさないと、体の限界がわからなくなってしまうので、予定に見合った結果を求めて、つい無理な労働をさせてしまうことになる。
--渡邉格「菌の声を聴け」P160

体で感じること 2

なぜ頭だけでなく体で感じることが重要なのか。それは、頭は平気で噓をつくけれど、体は嘘をつかないからである。
--渡邉格「菌の声を聴け」P157