あるレベルまで行ってしまうと、それまで稽古してきた型はその人自身によって否定されることがしばしばあります。その意味で、新しい技を使えるようになって、「これは行けそうだ」と思ったときが罠。そこに満足していると次に行けないから、常に「やがて捨てるつもり」で取り組まなければなりません。
--甲野善紀 「武」P119
達成感はある面、進歩の敵です。もちろん、ある程度は必要ですが、それで満足してしまってはダメ。喜びつつも、絶えず飢えているような状況に持っていく。がっかりさせてはだめですが、「まだまだ」と、貪欲になるように自分を持っていくのがコツです。
--甲野善紀 「武」P102
閉鎖環境の中にいる生き物は、いずれ自分が排泄したアンモニアの毒にやられて死ぬことになっている。
--小田嶋隆「その「正義」があぶない」P57
ゴールデンの視聴者が笑うのは「ほかの誰かが笑っている」からだ。泣く理由も同じ。8割はもらい泣きだ。笑い、涙、元気、勇気。視聴者は画面からもらうことばかり考えている。
--小田嶋隆「その「正義」があぶない」P56
高度に複雑かつ専門的になった科学によって引き起こされる「反知性主義」は、決して意図されたものではなく、内在的なものである。それだけに、ある意味で一層たちが悪い。その大きな流れに抗うには、新しい技術に振り回されすぎたり、情報検索に教えられすぎたり、目的にしばられすぎたりすることを意識的に回避しながら、自分の頭の中でしっかり考えるということを徹底していくしかない。
--仲野徹「日本の反知性主義」P281
一番大事なのは、知識を強化したり増やしたりすることじゃなくて、今の自分の頭の中で作動している推理とか、直観の仕組みそのものをそのつどの情報入力や環境の変化に対応して組み換えて、高度化できる可塑性だと思うんです。
--内田樹「日本の反知性主義」P225
親の欲望、親の抱えていた欠落感って、子どもにダイレクトに伝わりますね。不思議なもので、「親が持っているもの」はそれほど遺伝しないんだけども、「親が持ってなくて、欲しがっていたもの」って、子どもにそのまま遺伝する。
--内田樹「日本の反知性主義」P204
近代日本は、「天皇の使いよう」で樹立された国家だ。そして「天皇の使いよう」がまずくて迷走し、1945年の破局を迎えた国家だ。
--赤坂真理「日本の反知性主義」P139
ひとが「ふるえる」のは、自分が長い時間の流れの中において、「いるべきときに、いるべきところにいて、なすべきことをしている」という実感を得たときである。
--内田樹「日本の反知性主義」P35
何かを真に征服する唯一の方法とは、愛することなのだ。
--クリストファー・マクドゥーガル「BORN TO RUN 走るために生まれた」P176