ほんとうに貧しくて、とうてい生きてゆけない状況に追い詰められたら、必ず人間は助け合う。周りの人間を蹴落としてゆこうなんていうことは、自分が蹴落とされたら飢え死にするという状況では出てこないんです。ある程度豊かな状況において初めて人間は残酷になれる。人間同士で肌寄せ合ってゆかなければ生き延びてゆけないときは相互扶助的になる。
--内田樹「「意地悪」化する日本」P60