十六世紀に宇宙の無限性を唱えて、コペルニクスの地動説を擁護したジョルダーノ・ブルーノがドミニコ会修道士(キリスト教徒)であったように、「異端」とはアウトサイダーのことでは決してない。ある共同体や組織の「周縁」を住処にして、そこから「異言」を唱える「奇人」や「変人」である。生物多様性が、地球に棲むすべての生物のための環境維持に欠かせないように、文化の多様性をもたらす「異端」の存在も、共同体を活性化するのに役立つ。
--越川芳明 「私小説」を逸脱する「私小説」 島田雅彦『君が異端だった頃』より