池上六朗先生が前にこう言われてました。「悩み」というのは考えても解決がつかないこと、「問題」というのは具体的な解決の手順がわかっていること(でも、やるのはけっこうたいへん)。「悩み」を「問題」に変換するのが生きる要諦である、と。
よく「問題解決能力」という言い方をしますけれど、ほんとうはあれは「悩みを問題に変換する能力」のことなんだと思いますう。重大な問題はちょっと能力があったくらいでは解決しません。でも、「この方向でこつこつと努力を積み上げて行けばいつか解決する」という見通しを立てることならできる。
アントニオ猪木の名言に「ピンチというのは厄介ごとがダマになっている状態のことで、厄介ごとを一つ一つ解決してゆけばピンチは脱出できる」というものがあります。けだし名言。この「ピンチ」と「厄介ごと」は「悩み」と「問題」と同じことだと思います。
高校生たちが無力感に囚われるのは「悩み」と「問題」、「ピンチ」と「厄介ごと」を区別する仕方をまだ学んでいないからではないでしょうか。これ難しいんですよね。国際関係論では「危機」をdanger とriskに分類するそうですけれど、アイディアは同じですね。
--内田樹(2018年10月29日のTweet)