勉強が出来ない子ども、あるいはスポーツや芸能の領域で期待通りの成績をあげることのできない子どもを罵倒したり打揄したりする親がいるが、そのような親たちが、「子供の将来に対する懸念ゆえである」と言いつくろっても、私はそれを信じることができない。それよりはむしろ、子どもの無力が、親の(それまで隠蔽してきた)無力を露呈させる裏切りの記号として周囲の人々から読解されるのではないかという恐怖が彼らを駆り立てている可能性を吟味した方がよいのではないか。
--内田樹 「「少子化問題」は存在しない」(『こんな日本でよかったね』)P119